ウェルネスツーリズムとは、心身の健康や暮らしの質を高めることを目的にした旅のことです。温泉、食、自然、ひとり時間。日本には、そのための場所が数多くあります。
こんな旅も、ウェルネスツーリズムです
温泉に浸かって、ただぼーっとする。ひとりで宿に泊まって、誰にも気を遣わずに過ごす。サウナで汗をかいて、ごはんをゆっくり味わう。森を少し歩いて、早めに眠る。
「ウェルネスツーリズム」という名前を知らなくても、そんな旅をしたことがあるなら、それはもうウェルネスツーリズムです。
ウェルネスツーリズムの種類|定義にもとづく6つの分野
ウェルネス産業を調査する非営利団体GWI(グローバル・ウェルネス・インスティテュート)は、旅先での整え方を8つの分野に分けています。体を動かす、自然のなかで過ごす、食べ方を変える、湯や施術で休む、ヨガや瞑想をする、自分を見つめ直す、ひとりの時間や祈りを持つ、そして検診を受ける。この8つです。
このうち「検診を受ける」は病院の役割なので、医療を目的にした旅(メディカルツーリズム)として別に数えられています。宿に泊まって成り立つのは、残りの7つです。ウェルネスツーリズムJAPANでは、宿の選び方に合わせて6つに整理しています。
温泉・温浴|源泉かけ流し・湯治の宿
世界のウェルネス産業を調べた報告書に、日本の項目として挙がっているのは「温泉」と「スーパー銭湯」の2語だけです。それで通じてしまう国は、ほかにありません。源泉かけ流しは、水を足さず、沸かし直さず、同じ湯を回さない出し方のこと。湯船に届くまでに手が加わっていないぶん、その湯の性質がそのまま出ます。
スパ・施術|サウナ・岩盤浴・エステのある宿
自分では何もしない休み方です。人の手に、あるいは熱にまかせる。サウナと岩盤浴もここに入ります。フィンランドのサウナ、韓国のチムジルバン、日本の岩盤浴。汗をかく場所は、どの国にもそれぞれの形であります。宿に併設されていれば、閉館時間を気にせず、何度でも入り直せます。
サウナのある宿 / 岩盤浴のある宿 / スパ・エステのある宿 / マッサージが受けられる宿
運動・自然|森歩き・サイクリング・プールのある宿
歩く、自転車に乗る、水に入る。「体を動かす」「自然のなかで過ごす」に並んでいるのは、記録を伸ばす話ではなく、動くこと自体です。息が上がらなくてもかまいません。宿のまわりが森や水辺なら、朝に少し歩くだけで足ります。
ヨガ・瞑想|坐禅ができる宿
ヨガ、瞑想、太極拳、気功。体の姿勢から入って、整うのは気持ちのほうです。ウェルネスの6つの側面のうち精神・感情・スピリチュアルの3つに同時に関わるとされていて、8分野のなかでは守備範囲がいちばん広い。日本では、お寺の坐禅と写経がこれにあたります。
食事|精進料理・自炊ができる宿
旅先の食事は、たいてい宿のほうが決めます。夕食は6時、朝食は7時半、献立はこれ。この分野は、そこを自分の手に戻す話です。精進料理の宿坊に泊まれば品数が減り、台所のある宿なら自分で作ることになる。どちらも、いつもと違う食べ方を数日だけ試す旅です。
ひとりの時間|ひとりで泊まれる宿・宿坊
この2分野に並んでいるのは、ひとりで過ごす時間、祈り、読書、リトリート。つまり、何もしないことが活動として数えられています。予定を埋めないことに意味がある——そういう前提で分類ができているのが、ウェルネスツーリズムの変わっているところです。ひとり泊や宿坊での滞在は、ここに入ります。
ウェルネスツーリズムの定義|世界と日本の違い
世界では、ウェルネスツーリズムは「心身の健康や暮らしの質を高めることを目的にした旅」と定義されています(国連世界観光機関/欧州旅行委員会『Exploring Health Tourism』2018年)。医療行為を受ける旅は、メディカルツーリズムとして別に整理されています。
海外ではスパやリトリートが中心ですが、日本には温泉、季節の食、身近な自然という、暮らしの延長にある整え方があります。わざわざ構えなくても、ふだんの旅のなかに整う時間があるのが、日本のウェルネスツーリズムです。
プライマリーとセカンダリー|旅の目的が「整えること」かどうか
GWIは、ウェルネスツーリズムをする人を2つに分けています。ウェルネスを目的に旅先を決める人がプライマリー、旅の目的は別にありながら、滞在中に整う過ごし方をする人がセカンダリーです。
世界のウェルネスツーリズムを100回の旅として数えると、そのうち89回はセカンダリーの旅です。使われたお金で数えても、100のうち86はセカンダリーが使っています(GWI『Global Wellness Tourism Economy』2018年、2017年の数値)。
ウェルネスツーリズムの主役は、リトリートに申し込む人ではありません。ふつうの旅のなかで温泉やスパに立ち寄る人です。数でも金額でも、そちらが9割近くを占めています。
ただし、2つの割合はぴったり同じではありません。金額のほうが3ポイント低い。目的を決めて出かける人は、数こそ少なくても、1回の旅により多く使っているということです。
日本の旅の多くは、セカンダリーにあたる
日本では「ウェルネスツーリズムをしに行く」と考えて旅に出る人は、まだ多くありません。温泉旅行、ひとり旅、自分へのご褒美。そういう言葉で出かけて、結果として整っている。これはGWIの分類でいうセカンダリーにあたります。
名前を知らないまま、すでに実践している人がたくさんいる。このページの冒頭で「こんな旅も、ウェルネスツーリズムです」と書いたのは、そのためです。
グローバル・ウェルネス・インスティテュートの推計では、日本のウェルネス経済は世界4位の規模です(2024年)。この「ウェルネス経済」には、旅行だけでなく食品や美容なども含まれます。
ウェルネスツーリズムJAPANについて
源泉かけ流しで、ひとりで泊まれて、自炊もできる宿。この条件で一覧を出せる場所が、どこにもありませんでした。予約サイトは料金と日付で探すようにできていて、泉質や過ごし方では絞れないからです。
このサイトは、その条件で宿を引けるようにした一覧です。全国の宿泊施設およそ44,000軒を集め、公式サイトのある約28,000軒の掲載内容を読んで、ウェルネスツーリズムとして過ごせる宿を選びました。いま9,684軒を公開しています。
何をウェルネスツーリズムとして数えているか、何をどこまで確かめたかは、掲載基準と考え方にまとめています。
ここまで挙げた6つの分野は、そのまま宿を選ぶ条件になっています。源泉かけ流し、自炊、ひとり泊、坐禅。気になる過ごし方から宿を見られます。
条件から選ぶ / 施設・プログラム / コラム / 体験レポート
出典
- 国連世界観光機関(UNWTO)/欧州旅行委員会(ETC)『Exploring Health Tourism』2018年
- グローバル・ウェルネス・インスティテュート(GWI)『Global Wellness Tourism Economy』2018年
- グローバル・ウェルネス・インスティテュート(GWI)『Global Wellness Economy Monitor 2024』2024年
